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目次
「スピリチュアル×量子論」はエセ科学・非科学である
今回の文字起こしの要点
- 「引き寄せの法則」は科学的な“法則”ではなく、再現性が不明確な"仮説"にすぎない。
- 夢が実現できないのを「あなたの思い方や考え方が足りない」という言葉で一蹴するのは、文字通り「夢のない」言い方ではないのか。
- 夢の実現を科学に保証してもらうようになったとき、人間は魂を放棄したことになる。
- たとえ叶わなくとも、夢の実現に向かって魂を燃焼させることが真のスピリチュアルである。
今回は、以前もお話ししたことがありますが、スピリチュアルと量子力学、いわゆる量子論についてのお話です。
これまでのブログ内容に基づきながら、改めてこのテーマを取り上げてみたいと思います。
タイトルは
「願望実現や引き寄せは本当に科学で説明できるのか?」
といったところでしょうか。
言い換えれば、
「夢が叶わない本当の理由、それを科学で説明できますか?」
という問いでもあります。
「夢が叶わない」なんて言うと嫌がられそうですが、多くの夢が叶うことなく消えてゆくのは事実です。
なので、ここではキレイゴト抜きで考えたいんですね。
量子論については、過去にも何度か言及してきました。
以前の配信では、私が尊敬している田坂広志先生の著書、『死は存在しない』という本をご紹介しました。
この回では、引き寄せやスピリチュアルの世界、さらに「魂」の存在は、現段階では科学で解明されていないということ。
だからこそ性急に答えを出さず、慎重に向き合った方が良いというお話をしました。
スピ業界においては、「引き寄せ」をはじめとしたスピリチュアルなネタを、さも科学で解き明かせたかのように語る人たちは少なくありません。
本にしたり、YouTubeで配信したり、セミナーや講座のコンテンツとして提供する人たちもいます。
それは決して悪いとは思いません。
現代科学が解明している範囲内でわかりやすく説明することは、それまで「眉唾」とか「オカルト」と言われていた領域に光を当てる意味において、無意味とは思わないからです。
ですが、往々にして「これが答えだ!」と断定的に言いがちで、それでは誤解が生じるでしょう。
CD(コンパクトディスク)の発明された科学者として、またスピリチュアルにも造詣が深い天外伺朗さんという方がいます。
天外さんの本は、私も過去に何冊か読んでいます。
その中で天外さんは、スピリチュアルを量子力学と絡めて説明する風潮について、「誤解があるのは仕方がない」とおっしゃっています。
「なぜなら、理系としてのトレーニングを受けていない人が、スピリチュアルを科学に絡めて断定的に語ってしまうのは、ある意味当然とも言えるからです」と。
私も科学者ではありませんが、科学とはそもそも実験と観察によって「再現性」が証明できることが前提だと思います。
ある人が「引き寄せ」を実現できたからといって、それだけでもって「誰でも再現可能なもの」として、あたかも「法則」として語るのは、科学ではありません。
サプリメントの広告にありそうな「※個人の感想です」の域を超えるものではない。
それを科学っぽい衣装を着せて声高に語るのは、やはり知的誠実さに欠けます。
でも、スピリチュアル業界ではそういうものが今でもウケが良い。
それは失礼な表現になりますが、スピリチュアルに関心を持つ層の中で、科学に関心のある人は少ないということなのかもしれません。
「そうか、スピリチュアルって科学的に証明されてるんだ」と、非科学的に思い込むことは、果たして幸せなのでしょうか。
それでも「信じる者は救われる」のでしょうか。
引き寄せの法則は「法則」ではなく再現性のない「仮説」に過ぎない
願望実現に、明確な再現性はありません。
夢は、誰もが大なり小なり抱くものですよね。
でも、それを本当に実現できる人は限られています。
もし「思考は現実化する」のが本当なら、誰がやっても成功できるはず。
けれども、現実には願っても叶わないことの方が多い。
逆に、特に強く願ったわけでもないのに、なぜかトントン拍子でうまくいく、という「逆・理不尽」のケースもありますよね。
私自身はスピリチュアルの仕事で10年以上になりますが、「寝ても覚めても、成功を念じた」ことはありません。
そもそも「引き寄せの法則」に批判的な私は、もちろん引き寄せも実践していません。
引き寄せの実践にある「ワクワク」なんて誰がするかいなアホっ!と思ってきました(笑)
でも、現時点でもう10年以上この仕事を続けているし、副業の期間を含めれば15年以上です。
ここまで大して苦労なく続けてこれたのは、「波動が整っていたから」ですか?
「宇宙法則」に乗っていたからですか?
私自身は、そんなもの知りません。
描いた夢や願望が叶わなかったとき、
「あなたの波動が整っていなかったからだ」
「あなたの信じる力が足りなかったからだ」
「あなたのセルフイメージが小さかったからだ」
といった「もっともらしい理屈」で片付けがちです。
ただ、中には本人なりには本気で夢を描いた人だっているはずですよ。
それでもなお、「信じる力が足りなかった」のでしょうか。
引き寄せや成功法則というのは、文字通り「夢みたいなこと」を語っていながら、うまくいかないときは「自己責任論」の中に無情に突き落とす。
とてもクールでドライで、「夢がない」と思いませんか?
運命というのは、どれだけ科学が発達したとしても、その全容を解明することはできないんでしょうね。
スピリチュアルと量子論を組み合わせた本を読んでも、最初は科学的っぽい語り口なんですが、後半になると「自分を許しましょう」「自分を愛しましょう」「おまかせしましょう」「あなたは愛されています」みたいな展開になる。
「なんやねん、結局いつものスピリチュアルやんけ!」という印象を受けざるを得ません。
現実を見れば、成功するのはほんの一握りです。
なのに、本屋に行けば「あなたも必ず成功できる宇宙法則」の新刊本がいくつも並んでいる。
そういうのは「法則」ではなく、これも以前言ったことがありますが、"こうしたらうまくいくかもしれないよね" という「仮説」に過ぎません。
ただ、そういう本が今でもたくさん出てくるのは、読者にそういうニーズ――できればラクして、ショートカットして成功したい――という欲望があるからです。
量子力学とスピリチュアルを組み合わせた成功法則が流行るのも、「本当に再現性のある法則だったらいいな」という欲望を刺激してくれるからです。
しかもそれが「科学っぽい衣装」をまとっているので、なんだか保証されているような気持ちになりがちです。
現代は「科学こそ最大の宗教」であることを忘れ、エビデンスっぽいことを示されると安心してしまう。
宗教であるところの科学と、オカルト的な要素もあるスピリチュアル。
これはある意味では「相性バツグン」なのでしょうね。
夢や願望が簡単に叶ってしまう世界はディストピアである
前もどこかで言ったことがありますが、「成功が保証されている夢」なんて、もはや「夢」の名に値しません。
めったに叶わないからこそ、「夢」や「願望」というんです。
科学に――最近ではAIも入りますが――夢の実現を保証する・しないの判断を頼っていたら、そのとき人間はもう「魂」を失ったことになるでしょう。
科学というのは、あくまで科学的な見方や観察結果によって現象を説明するだけに過ぎません。
でも、私たちの運命がどうなるかなんて、私たち自身にもわからないし、ましてや科学では絶対に解明できないんです。
もちろん、素人でも量子論をかじれば、ニュートン物理学では説明できない素粒子世界の不思議は、そのまま存在の不思議へと通じていくでしょう。
それでも「謎は、いまだ謎のまま」であって、「すべては解明された」と断定するのは早とちり過ぎます。
思うに「スピリチュアル量子論」のジャンルは、科学的思考のできない層、あるいは疑うことを知らない「お花畑」の層に向けて発信されているのでしょう。
私たちの運命において大切なことは、自分の信ずる夢や目標に向かって、「いま・ここ」を燃えて生きるということしかありません。
量子論で言う「観測者問題」――簡単に言えば、意識をもって観察するものが現実になるということ――が本当だとしても、私たちが思い描く夢が現実になるとは限りません。
「意識」とひとことで言っても、仏教で「一念三千世界」と言われる通り、私たちの心の表層では認識できない「意識の深層」が幾多もあるんですから。
でも、現実になるかならないかは、魂からすれば関係ない。
仮にその夢が叶わなくても、夢に向かって挑戦し続けることこそ、魂としてのあり方なんです。
以前ご紹介したシルバーバーチの言葉に、
「もしあなた方の願いがすべて叶ってしまったら、世の中は大変なことになるでしょう」
というものがあります。
つまり、エゴに基づいた欲望が次々に叶ってしまえば、社会全体が混乱に陥るということに警鐘を鳴らしているんです。
スピリチュアル量子論的に言えば、「発振した意識の周波数がそのまま現実化してしまう」と、世界は崩壊するでしょう。
なぜなら、フロイトを持ち出すまでもなく、地上の人間の大半は意識の根底に「暴力」への衝動を持っているからです。
現在だって、世界のどこかで紛争やテロが起こっているではありませんか。
願望が簡単に実現する世界になってしまったら、暴力はもっと加速していきますよ。
だから私も含めた世界人類のみなさん、良かったね、ヘタに願望が実現できない世界で。
そもそも大きな夢や願望であるほど、限られた今生の時間において実現することはできません。
いくら意識の周波数をそれに合わせても、この世でそれが実現するためには、まとまった時間が必要なんですから。
スピリチュアルの本質が「魂」であり、この物質世界を超越するものであるなら、この世での願望実現に執着してはなりません。
そもそもスピリチュアル量子論が言う通り、「愛」や「豊かさ」に意識の波長を合わせられたら、そんな執着は起こらないはずです。
それなのに、どの論者も「願望実現」を言いたがるのはどうしてなのか。
結局は、そうして大衆のエゴを刺激して本やコンテンツを売り、経済的成功を中心とした「自己実現」を遂げたいんでしょうね。
そんなのは、もはや全くスピリチュアルじゃないんです。
いずれにせよ、最高の意識のありようとは、「神」や「大宇宙」と呼ばれる何か。
であるなら、本当にスピリチュアル量子論を謳いたいなら、本当に意識の波長を合わせるべきはその周波数ではないでしょうか。
現象のことは、「大いなる愛」や「大いなる豊かさ」の周波数によって調っていくのではないですか?
それとも、やっぱり具体的な願望実現を謳わないと、アクセス数や再生回数を稼げないのでしょうか?
スピリチュアル量子論のコンテンツは、最初は科学的な説明をするのに、後半になるにつれ「自分を愛しましょう」「このツボをマッサージすると血行が良くなって意識がクリアになります」とか、全く科学的でないことを言い出しやがる(笑)
無理にページ数を埋めるために、余計なことを言わないといけない――非科学やインチキっぷりをカモフラージュするためなのでしょうか。
現時点では、「スピリチュアル×量子論」と言ったところで、しょせんその程度のシロモノです。
特にこの世界を探求したいと思わなければ、田坂広志先生の『死は存在しない』を読むだけで結構です。
私の知人に、意識と科学をつなぐ研究をしている非常に優秀な人がいます。
理論物理学のバリバリの研究者でもあります。
そういった最先端の研究者ですら、「まだ意識は解明されていない。ほとんどのことがわかっていない」と口を揃えて言うんですよ。
なので本屋さんのスピリチュアルコーナーに「スピリチュアル量子論」の本があるのを見ると、またか……という気分になってしまいますね。
これは私にはとても不本意なことなので、素人なりにもっと量子論を学び、今後はスピリチュアル量子論の論理的欠陥をさらに指摘していけたらと思います。
改めて、今回の文字起こしの要点
- 「引き寄せの法則」は科学的な“法則”ではなく、再現性が不明確な"仮説"にすぎない。
- 夢が実現できないのを「あなたの思い方や考え方が足りない」という言葉で一蹴するのは、文字通り「夢のない」言い方ではないのか。
- 夢の実現を科学に保証してもらうようになったとき、人間は魂を放棄したことになる。
- たとえ叶わなくとも、夢の実現に向かって魂を燃焼させることが真のスピリチュアルである。
