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第305回:「引き寄せ」よりプロセスが大事─カウンセリングの神様カール・ロジャーズに学ぶ

※ウェブサイト『マジスピ』には音声の文字起こし(読みやすく加筆修正済)があります。

■今回は以下のブログを違う角度から語り直しました(https://prism-life.com/fully-functioning-person/

■YouTubeではメモ、資料、スライドなどを映していますが、音声プラットフォームの「ながら聞き」でも十分ご理解いただけると思います。

ウェブサイトでは最下部に音声プレーヤーがあります。倍速再生も可能ですし、YouTubeより通信量も少ないし、スマホを画面オフにしても聴けるので便利です。

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ロジャーズ理論とスピリチュアルの接点

今回の文字起こしの要点

  • カール・ロジャーズの心理学理論を通じて、「人生はプロセスである」という視点の重要性を探る。
  • 現代スピリチュアルで語られる「引き寄せ」や「覚醒」を、結果よりも過程として捉え直す。
  • 自己実現とはエゴの満足ではなく、命の内側から湧き出る自然な流れに従うこと。

今回ですね、久々に過去のブログの解説をしていきたいと思います。

タイトルとしては、ややお勉強的な内容で、若干難しいかもしれませんが、心理学について取り上げます。

具体的には、スピリチュアル的なカウンセリング理論に学ぶ「引き寄せよりプロセス」という考え方についてです。

今回取り上げるのは、「カウンセリングの神様」と言われているカール・ロジャーズという方です。

心理学やカウンセリングを学ぶ方は必ず触れる人物であり、特にカウンセラーを目指す方で知らない人はいないでしょう。

今回はロジャーズの理論をごくごく一部を取り上げながら、スピリチュアルな知恵を学んでいきます。

若干難しい内容も含まれます。

いつもは「ながら聞き」でも結構なのですが、YouTubeではロジャーズの言葉を映しながらお話ししていくので、必要に応じてご活用ください。

ロジャーズは本来はスピリチュアルな人物ではなく、心理学者です。

しかし、晩年の著作はスピリチュアル的な傾向がかなり強くなっているので、もともとスピリチュアル的な価値観は持っていたと思われます。

今回紹介する内容は、彼の若い頃の論文をベースにしているので正面からスピリチュアルを語っているわけではありませんが、土台にはそれが見えるということです。

私は最近『マジスピ』(真のスピリチュアル)に対比して「普通のスピリチュアル」と言っているのですが、普通のスピリチュアルの言葉は、まるで綿アメのようにふわっとして甘ったるく、子どもでも分かるような言葉が多い印象です。

しかし、真にスピリチュアルな探究をしていくのであれば、学問的な要素も必要です。

かつて私の師匠は「スピリチュアルは学問でなければならない」とおっしゃっていました。

もちろん、スピリチュアル的な領域は学問では完全に解き明かせませんが、それでもできる限り学問的に追求していく姿勢が大切なのです。

では最初に、ロジャーズの言葉で今回の核心とも言えるものをご紹介しましょう。

「良い人生とは状態ではなく、プロセスであり、目的地ではなく、方向である」

非常に重要な言葉であり、同時にスピリチュアルな考え方でもあります。

ロジャーズの学問的立ち位置は「人間性心理学」というジャンルに分類されます。

心理学にはさまざまな流派があり、精神分析やユング心理学など多様なジャンルがあります。

その中で人間性心理学とは、文字通り「人間とは何か?」という問いを根底に据えたアプローチです。

ちなみに、有名な『マズローの5段階欲求説』を提唱したアブラハム・マズローは「人間性心理学」の創設者の一人です。

人間は機械ではありません。

不合理で、非論理的な側面を多分に含んでいます。

そして、それは魂やスピリチュアルという視点でも語られるものです。

ロジャーズは、そうした領域までをも含んで研究し、その実践としてカウンセリングを展開しました。

本日はカウンセリングの実践ではなく、理論面を中心に解説していきます。

目標ではなく方向──プロセスとしての自己実現

その中で重要なのが、「人生はプロセスである」という視点です。

これはまさにスピリチュアルであり、かつ東洋的でもある考え方です。

西洋的な発想では「自己実現」「目標達成」「成功」といった目的指向の考え方が主流です。

スピリチュアルでは「引き寄せ」「覚醒」「目覚め」といった概念が語られますが、その多くはこれらがまるで「目指すべき目標・到達地点」のように語られがちです。

ただ、本当は目覚めや覚醒も、あくまでプロセスの一部にすぎません。

それらをゴール・目標と捉えてしまうと、それに向かっている「現在」は未熟であり不完全なものになってしまうんですね。

よく「いま・ここが大事だ」なんて言っているくせに、この考え方だと「いま・ここ」を否定することになりはしませんか?

そうじゃなくて、本来のスピリチュアルは結果でなく「プロセス指向」だよ、というのが今回言いたいことです。

ちなみに「思考」じゃなくて「指向」ですよ。間違いじゃないです。

これは「方向性」という意味合いです。

このような東洋的な発想を、アメリカ人であるカール・ロジャーズが語っていたというのは、非常に興味深いことですね。

第二次世界大戦後、彼のカウンセリング理論は日本で大流行しました。

その理由の一つは、そもそも彼の理論が東洋的な感性と親和性が高かったからでしょう。

これをもう少し深めると、「自己実現傾向」というキーワードが出てきます。

ちょっと難しいですが、引用します(難しいと感じたら飛ばしてください)。

自己実現傾向とは:人間本性には、さらなる適合と現実的機能に向かう基本的局面がある。この衝動は人間に限られたものではなく、あらゆる生物のプロセスの一部であり、拡大、拡張、自立、発達、成熟へと向かう衝動は、すべての生物と人間に顕著な衝動である。これはその活性化が有機体や自己を高めるまで、有機体の全能力を表現、活性化しようとする傾向である・・・自己はわれわれの理論の重要な構成要素であるが、自己は何かを『する』わけではない。自己はそれ自体を維持、向上するよう行動する有機体の一般的傾向の一つの表現に過ぎない。

「自己実現」は、現代では「夢の実現」「収入アップ」など、目に見える成果として語られがちです。

「アメリカンドリーム」なんて、まさにこれでしょう。

英語では「Self-realization(自己実現)」と表現されます。

しかし、ロジャーズの言う「自己実現傾向」はそれとは異なり、

「Self-actualizing(自己実現傾向)」と言っています。

この違いは非常に重要です。

「Self-realization」は、例えば「年収○○万円になりたい」「理想のパートナーと出会いたい」といった具体的な目標を指します。

数値化され、他人にも証明可能な成果ですね。

一方「Self-actualizing」は、そういった目標を達成するというより、命の内側から湧き出る「成長したい」「向上したい」「より良く生きたい」という自然な衝動に従うことを言います。

理性や頭で考えるメリットで動くのではなく、自分を動かしていく「命の働き」を感じるということです。

この「自己実現傾向」こそロジャーズの理論の核心であり、そして本質的にはスピリチュアルな概念とも言えるでしょう。

少し難しかったかもしれませんが、要は目標を達成することも大事だが、それ以上に命の働きとしてのプロセスを尊重する、という視点をロジャーズは語っていたということです。

この命の働きとしてのプロセスが阻害されているとき、私たちは十分に機能できなくなり、心を病んでしまうのです。

例えば自分の意に反して親の言うことをガマンして聞く子どもは、いつか「自分は本当は何をしたかったのか」を考えられなくなり、それによって心身の調子を崩してしまうといったことです。

その心身の悪化がどんなサインを発しているのかを丁寧に丁寧に受け止めていくことによって、失われた心身の機能を本来ある状態へ戻していくのがカウンセリングと言えます。

このあたりは定義も含めて少し専門的になりますので、音声だけで聞いている方には伝わりづらいかもしれません。

もし可能であれば、YouTubeで画面付きの動画をご覧いただければと思います。

「自己実現傾向」とは、人間の本性に備わった、より良い適合や現実的な機能を求める根源的な動きのことです。

この衝動は人間だけに限らず、すべての生物が持っている。

拡大・拡張・自立・発達・成熟へと向かうこの力は、生命あるものすべてに共通する基本的な傾向です。

例えば植物を思い浮かべてください。

水と土、そして太陽の光という基本的な環境条件が整えば、植物は自然と上へ、外へと伸びていこうとします。

それは頭で「成長しよう」と考えているわけではありません。

衝動――あるいは本能といっても良いでしょう。

それが、ロジャーズの言う「自己実現傾向」なのです。

さらにロジャーズはこう述べています。

“自己”というものは何かをする存在ではない。自己とは、自己を維持・向上させるように行動する有機体の一般的傾向の一つの表現にすぎない。

つまり、私たちが頭で「何かをしよう」と考える前に、もっと深い部分から「よくなりたい」という衝動があるのです。

これこそがスピリチュアルであり、カウンセリングの本質でもあります。

カウンセリングとは夢を叶えたり目標を達成するための手段というよりも、自分の内側にある命の流れを見出し、その流れに沿って生きることを助ける営みなのです。

「私はなぜこの宇宙から命を与えられたのか」

「自分に与えられた才能・縁・運命の中で、どの方向に進めばよいのか」

そんな問いと向き合うことが、自己実現傾向に従うということです。

頭で考える損得勘定や効率、人気や収入といった「計算された選択」は、実は「自我の自己実現」です。

それに対し、ロジャーズのいう「自己実現傾向」は、損得を超えた、内なる衝動からの選択です。

現代社会では「自我の実現」が多く語られます。

「好きなことだけして生きる」とか「引き寄せ」も、基本的にはエゴの領域から生じる欲望です。

一方、自己実現傾向とは、時に損をしたり、浮かばれなかったり、成功が保証されないような道をあえて選ぶことさえあるのです。

それでも、「内なる命の声」に従うことが、本当の幸せである――これがロジャーズの理論であり、私はここに共感します。

たとえば、私が過去にいただいたカウンセリングの中には、不登校や引きこもりに関する相談も多くありました。

親の立場から見れば、学校に行くことや社会復帰が「正解」のように思えるかもしれません。

しかし、子ども本人が「学校にはどうしても行けない」と感じているのであれば、その状態を否定せず、そのプロセスを受け入れることもまた重要なのです。

もちろん、それは簡単なことではありません。

カウンセリングを受けた結果として、不登校を積極的に選ぶというケースも起こり得ます。

つまり、一般的に言われている「成功」や「正解」とは逆の選択をする可能性すらあるわけです。

これが、スピリチュアルカウンセリングの本質であり、ある意味では非常に "怖い" 部分でもあります。

なぜなら、それは世間的な成功や安定を保証しないからです。

本当のスピリチュアルは、時に現世的なマイナスを被る覚悟を求められるものでもあるのです。

心身の不調は「生命のプロセス」への抵抗から生じる

さて、ロジャーズの理論の中には「完全に機能している人間」という概念があります。

完全に機能している人間:最適な心理的調整、最適な心理的成熟、完全な適合、体験に対する完全な解放性と同義である。・・・これらの用語のいくつかは、あたかもこうした人がそこに「到達してしまった」かのように少々静的に聞こえるので、こうした人の特徴はすべてプロセスの特徴であることを指摘しておかなければならない。完全に機能している人物は、常に変化しているプロセスの内にある人である

別の翻訳では「十分に機能している人間」とも言われます。

一見すると、このような人物像は「到達目標」のように聞こえますが、実はそうではありません。

ロジャーズはこうも述べています。

こうした人の特徴はすべてプロセスの特徴であり、完全に機能している人物は常に変化しているプロセスのうちにある存在である。

つまり、ゴールに到達した「完成形の人間」ではなく、常に変化のプロセスの中にある存在、それが「完全に機能している人間」なのです。

例えば、不登校や引きこもりの時期があったとしても、それもまたプロセスの一部です。

1ヶ月後や1年後には、「やっぱり学校に行こう」「社会に出てみよう」と思えるかもしれない。

その変化もまた、命のプロセスのうちなのです。

だからこそ、親や支援者は“コントロール”しようとするのではなく、“信じて待つ”ことが必要になります。

命のプロセスは、誰にもコントロールできないのです。

人間も命である以上、上から押しつけられた構成やルールに無理に合わせようとしても、心から納得して変わることはありません。

だからこそ、人生のプロセス全体において、そしてカウンセリングのプロセスにおいても、「忍耐」が求められるのです。

「みんながこうしているから、あなたもそうしなさい」と言われても、素直に従える人もいれば、そうでない人もいます。

誰もが同じように変化できるわけではない。

そうした一人ひとりの「生命のプロセス」を尊重することが、カウンセリングマインドの根幹にある考え方なのです。

繰り返しますが、スピリチュアルでは「悟ったら終わり」「覚醒したら完成」というふうにゴールとして固定化する見方がありますが、実際はそうではありません。

「悟り」も「覚醒」も、すべてはプロセスの一部に過ぎない。

本当に波動やオーラが整っている人ほど、「自分は悟った」などとは言いません。

命は常に流れて変化しているのだから、「これで終わり」なんてあり得ないのです。

それを「自分は悟った」「もう到達した」と固定化してしまった瞬間、命のプロセスは止まります。

それはまるで川の流れがよどみ、腐敗していくようなものです。

だから私は「自称覚醒者」「自分で"ワタシは目覚めた"という寝言を言うヤツ」は信用するなと言うんです。

私が観ると、本当にショボい波動(オーラ)をしているので、もう笑えないんですよ……やれやれ。

人が悩み、堂々巡りをするのも、すべて「固定化」が原因です。

思考がぐるぐると同じことを繰り返す。

A社がいいのか、B社がいいのか、結婚すべきか別れるべきかといったグルグル思考も、固定化から来るものです。

そして「エゴの機能」とは、この固定化そのものでもあります。

「安定が一番」「安心・安全がほしい」とよく言われますが、それもまた固定化の一種です。

固定化して「これが答えだ」と決めた方がエゴにとっては安心なのですが、しかしそれは生命のプロセスを止めてしまうのです。

勇気をもって「ゆだねる」ことの本当の意味

ロジャーズのカウンセリング理論では、「無条件の肯定的関心(unconditional positive regard)」という態度が重要視されます。

これは「相手の変化のプロセスそのものを尊重する」という姿勢に根ざしています。

変化し続ける「命のプロセス」を信頼する。

それは、心理学でありながらも、非常にスピリチュアルな考え方だと思います。

私はスピリチュアルよりも、むしろカウンセリングの方を深く学んできました。

一応、カウンセリングの資格も持っていますが、資格よりも実践と理解が大切だと考えています。

スピリチュアルの世界では「流れに任せる」「委ねる」といった表現がよく使われます。

これは、論理的思考を横に置き、自分を超えた何かを信頼する生命的な態度ですね。

固定化を避け、常に変化し続けるものに自らを明け渡すという姿勢です。

私が個人セッションや講座で使っている「禅タロット」のカードの中にも、

「Going with the flow(流れと共に行く)」

というカードがあります。

流れに身を任せること。

たとえそれが社会的に損をするように見えても、生命のプロセスに従うこと。

ただし、その流れに委ねることが、良い結果をもたらすかどうかはわかりません。

しかし、それでも信頼する。

ある意味では「賭け」に近いものも感じますが、それが「委ねる」ということの、ある意味では"危険"な本質です。

とはいえ、それでたとえ結果が損失に見えても、プロセスに沿った選択であれば、後悔はありません。

この「変化のプロセス」および「運命」を信頼するということは、決してお気楽な話ではありませんね。

だからこそ、「お任せ」という行為には大きな勇気が必要なのです。

ただ信じて委ねればうまくいく……なんて、イージーな話ではないですよ。

だから、「お任せ」や「委ねる」というのは、祈りそのものなのです。

では、今回はほんの一部――断片の断片のような紹介でしたが、関心があればカール・ロジャーズの本を手に取ってみてください。

翻訳書もたくさん出ているし、入門書的なものもたくさん出ています。

これは単なるカウンセリング理論ではなく、「人間とは何か」を考える学びでもあります。

ご紹介した内容が何かしら参考になれば幸いです。

なお、私はロジャーズの考え方に共感し、長い間「傾聴」を学んだ上で『自己探求カウンセリング』というメニューを行っています。

もしご関心があれば、私のホームページ「マジスピ」に掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

改めて、今回の文字起こしの要点

  • カール・ロジャーズの心理学理論を通じて、「人生はプロセスである」という視点の重要性を探る。
  • 現代スピリチュアルで語られる「引き寄せ」や「覚醒」を、結果よりも過程として捉え直す。
  • 自己実現とはエゴの満足ではなく、命の内側から湧き出る自然な流れに従うこと。
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第305回:「引き寄せ」よりプロセスが大事─カウンセリングの神様カール・ロジャーズに学ぶ
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